映像制作のボーダーレスの秘密

岡本 良太
岡本 良太
ご当地情報・九州編
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廃墟―魚雷発射試験場跡【後編】

>【前編】はこちら<

 

海の上の監視塔(?)は後回しにして、

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ひとまず、建物の中へと。

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中は本当にラピュタみたい。さすがに屋根は落ちてしまっていますが、そのおかげなのか、廃墟にありがちな陰湿な雰囲気はありません。

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頑強そうな鉄筋コンクリート。とても100年近く前の建築物とは思えません。

 

以前、ある建築家の方から聞いたお話なのですが。

最近の建物は『建築基準法』があるから、手間や予算のことも考えて、法律ギリギリの強度を保つように作られている。悪く言えば法律がリミッターになってしまうこともあるけれど、

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でも、戦前にはそんな法律もないから、当時の人たちは、持てる知識と労力、許された材料を全て注ぎ込み、自分達が作れる“最強の建物”を常に目指していたんだとか…

もちろん、経済効率や耐震なども考えると、頑強過ぎる建物がいいのかどうかは分からないのですが。

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この魚雷発射試験場の建物の中に立つと、当時の建築家や技術者たちの執念のようなものが感じられて、身が引き締まるような思いさえしてしまいます。

壁に落書きがない廃墟

床には一部にタイル張りが。

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戦後にわざわざ一部だけタイルを張ったとは考えにくいので、これも恐らくは当時のままなのでしょう。ということは、この建物は倉庫ではなく、やはり司令室や会議室だったのでしょうか。

当時、川棚では『九一式航空魚雷』と呼ばれる、飛行機に搭載するための魚雷を主に作っていたそうです。当時のプロペラ機が運ぶ魚雷とはいえ、1つ800kgもあったそうですから、倉庫をタイル張りにするのはあまりにも不経済すぎる…滑ると危険ですし。

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まあ、そんなことはともかく、床はデコボコが多いですし、至るところ草がボウボウに生えていますので、歩くときは気をつけて。サンダル履きで来ないほうが良いと思います。

 

昔は扉もあったのかな?小さな通りぬけの穴があって、

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ここを潜ると奥の小部屋に。

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小部屋のほうはさらに草がボウボウ。

大木まで生えていて、かなり鬱蒼とした感じ。

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壁も不気味。時間帯のせいもあるでしょうが、日当たりもあまり良くなくて、なんだかジメジメとしています。

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正直あまりいい気持ちはしませんが、こちらのほうがむしろ廃墟っぽい?

 

しかし。これまでいくつも廃墟だとか心霊スポットなどを訪れたのですが、ここは本当に美しいです。何といっても、壁に“落書き”が全くといっていいほど見当たらないのです。

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廃墟には、あまり品が良いとはいえない落書きが付き物なのですが、ここは(おそらく)当時のままの壁を保持しています。ベタな表現でお恥ずかしいですが、本当に、このコンクリートに囲まれた空間だけ、まだ70年前の空気がそのまま残っているよう。

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光量も充分だし、ちゃんと陰もあるし。それに、とても静かですし。

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撮影のロケ地に使われるのも納得。ここを訪れたのは夏の終わり~秋口ごろだったので、まだまだ蚊がいっぱいいましたけれど、まあ廃墟ですから、そのぐらいは仕方ないでしょう。あまりに居心地いいから、ついつい長居してしまう…

海のほうへ

後ろ髪引かれつつも、海へ。

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廃墟の建物の目の前が海。その上に監視塔らしきものが建っています。

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立て看板には、

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この魚雷発射試験所の由来が。設備と建物は、おそらくは昭和17年に造られた物なのでしょうが、この試験場自体は大正7年に設置されたものだそうです。およそ100年の歴史があるということか。。。

沖に建っているのは、やはり魚雷が真っ直ぐ走っているかどうかを確認するための塔だそうです。『立ち入り禁止』などとは書かれていませんが、いちおうガードレールのようなものが申し訳程度に橋を塞いでいたので、今回は進入を諦めておくことに。

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前に来たときは、地元の少年たちが塔の周りから海に飛び込んだり投げ釣りしたりしてたんですが…個人ブログなら躊躇なく行くところだけれど、ボーダーレスに何か迷惑がかかってもなぁ。

よく見ると、橋の上にはレールの跡らしきものが。

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恐らく魚雷を積んだトロッコか何かを、沖まで運んだのでしょう。

こういうのを見ると、往生際悪く、やっぱり沖の監視塔のそばに行きたくなるというもの。

岸から思いっきりズームして…

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やっぱりヤメておく事に。今にも崩れてきそう。近寄らないほうが賢明かと思います。

 

橋を横から見てみると、

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これもアーチ構造というのかな?強度を保ちつつ波を逃しているのでしょう。

と、そんなことよりも、

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めっちゃ水キレイ~!!

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ついつい、廃墟の美しい佇まいに見惚れてしまって、大村湾の素晴らしさを見落としてしまうところでした。

大切にしたい史跡

僕は廃墟マニアではありませんが、それでも、例えばこのブログでも以前紹介した“淡路島の巨大観音像”とか、あと“七つの家”などなど、これまでに色々とヤバそうな建物を巡ってきました。

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でも、この魚雷発射試験場は、ちょっと別格というか。

こんなにも自由に近付くことが出来て、しかも写真も撮り放題で。そして何よりも、とても落ち着くというか。不思議なのですが、また来たくなる、何度でも来たくなるようなスポットでもあります。

 

片島公園として整備されつつあるようなので、いちおう地図も。

 

偉そうに言える立場ではないのですが、落書きとかゴミのポイ捨てとかタバコの不始末とかは、本当に止めておいてほしいです…ここが立ち入り禁止になったり、規制が厳しくなったりしたら残念すぎます。

あと、建物自体は頑強そうですが、それでもここは“廃墟”なので、壁を叩いたり、不用意にもたれ掛かったり、重い荷物を立て掛けたりはしないほうが良いと思います。もし何か事故が起こってもボーダーレスは責任取れませんので、ここを訪れてみようと思われる方、お気を付けてどうぞ。

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